光が、差し込んだ。 泣きそうな目で見あげてくるハルに綱吉は目を逸らすことなんて出来なかった。 その目の中には色々な感情が混ざり合って浮かんでいて、数秒・・・もしかしたら数時間見つめあったままだった。 指ひとつですら動かすことは出来なくて、突然ハルが無表情になった瞬間綱吉は口を開いた。 「ハ――」 ル、と続けるつもりだった声は叩き付けるような足音と、その後に響いた渇いた音に飲み込まれた。 ジン、と熱さが頬に伝わって。 「ツナ、さん」 もう一度ハルの顔が泣きそうに歪んだ。 ハルに両頬を挟まれるように叩かれたのだと気付いたのは、事を見守っていた面々の中唯一漆黒の少年が噴出した時で。 痛いというよりは熱い頬に目を瞬いた。 「ハ、ル・・・」 もう一度名を呼ぶと、ハルの顔がまた泣きそうにぐにゃりと歪んだ(でも、涙は零れていなかった)。 両手は両頬に添えられたまま。 「ツナさん」 泣きそうに歪んだ声と頬に添えられた手は震えていて。 「ハルは、邪魔ですか?」 「ちがう・・・」 そんなこと、思ったことも無かった。 まだ別の少女が好きだったあの頃から・・・邪魔だなんて思ったことも無かった。 想いの居場所が変わってからは、むしろ手放すことすら恐ろしくて、そんなこと思うはずもなかった。 「ハルは、足手まといですか?」 その言葉には、否定することも肯定することも出来なかった。 確かに、戦闘面では戦えない彼女は足手まといでしかなかったし、護られる存在でしかなくって。 けれど、足手まといだと切り捨てるような存在じゃなくって。 「ツナさん」 またハルが名前を呼んで、泣きそうだった顔が少しだけ微笑んだ。 「大好き、です」 一瞬。 身震いが頭の先から足先まで、駆け巡った。 中学生の時から聞きなれていた言葉なのに。・・・いや、違う。その中に幼さは無くて。 熱に浮かされたように潤んだ瞳で見あげられて、綱吉は息をのんだ。 たったその一言が、瞳が、何よりも雄弁に語る。 じんわりと手から伝わる熱は暖かくて、その手は震えていた。 「・・・ハ、ル」 恐々と呼んだ名前は笑顔に受け止められて、綱吉の目の端に涙が浮かんだ。 「だから・・・ただ、傍にいたいだけなんです」 目の前が潤んできて、綱吉は下唇を噛んだ。 「ツナさん」 柔らかな声が、また綱吉を呼んだ。 目の前に浮かんでいる涙が光を反射してキラキラと輝いていて。 「ハルの、この想いは迷惑ですか?」 ついに、溢れた。 |