涙を流す俺の頬を何度も何度も撫でてくれて。 目の前で笑ってくれるハルの言葉を待った。 「ツナさん、お願いがあるんです」 「うん・・・」 やっぱり、ハルは俺なんかじゃ押さえこめられるような存在じゃなかった。 だけど、死んでほしくなくて・・・。 そんなぐるぐるした思考を一気に晴らすようにハルが笑った。 「ハルを、信じてください」 その笑顔は、輝いていて。 「なんて、ハルがこんなこと言えるだけの力は持ってないって知ってます。戦いじゃ何の役にもたたないって知ってます。護られちゃう存在になることも、分かってます」 「・・・ハル」 ちょっとだけ眉が寄せられたけど、笑顔は輝いたままだった。 ハルの言いたいことは言われなくても分かってた。 死なないってことを信じてほしいんだって思ってるんだって・・・でも、戦う力の無いハルが死なないなんて・・・。 「だから、ツナさん」 何度もハルが俺の名前を呼ぶ。 中学生でまだマフィアの現実すら知らなかったあの頃はその声を聞いたとき、ちょっとウザがったりもした。 でも、その声がないと、どうしたんだろう・・・って逆に不安になった日もあった。 ああ、多分・・・あの頃から。 「ハルがツナさんを大好きだってこと、知ってください」 三浦ハルという存在が自分の中で大きくなっていたんだ。 目の前で俺を好きであることが誇りのように言ってくれる彼女の言葉が、ダメダメな俺の存在を何よりも尊んでくれているような気がして。 いや、確かに“獄寺君”のもすさまじかったんだけど(むしろあの頃は勢いに押されてたっていうか、何ていうか)。 ハルの言葉一つ一つが、多分俺の中で積み重なってきて。 そうして、今――。 「もしハルが死んだらツナさんが哀しんでくれるって、知ってるんです。ツナさんは、優しい人だから」 ちょっとだけ、ハルの眉が悲しげに寄せられた。 ハルが死んだら・・・もしも、死んだら――涙すら溢れないんだろう。 きっと、泣く余裕なんてものすら無い。 「ハルが撃たれたときにですね悲しい顔してるツナさんに思ったんです。ツナさんにこんな顔させちゃ駄目だーって。だから、絶対生きようって」 また涙が零れた。 どうしてこんなに強い存在であれるんだろう、胸を張れるんだろう。 どうしてこんなに――俺を好きでいてくれるんだろう。 「ハル・・・ハル、ハルっ」 「だからね、ツナさん」 照れたようにハルが笑って、また俺の涙が零れて。 「死にかけたって、離れてたって。無理したって泥水吸ったって、地面這いつくばっても、大好きなツナさんのところに生きて帰ろうって・・・誓ってるんです」 一緒にいたいって、そう思ったあの日から・・・決して一人にはしないって。 一つ一つ、また心に響いて。心の中に積み重なっていく。 ああ、何で、いつのまに・・・こんなにも大切な人になっちゃったんだ。 「――っハル」 またハルが俺の頬を撫でた。 「だからツナさん。ハルのこの気持ちを、知っててください」 |