もう一回重ねて、また笑いがこぼれて。

目の前で笑ってくれるハルが、ちんけな言葉だけど愛しくて愛しくて。



そっと舌で上唇と下唇の間をなぞると、ビクリとハルの体が震えた(やばい、にやけそう)。
吃驚して目を真ん丸に見開いて目があうと、ハルはさらに目を見開いた。

「ツ――」
ハルが俺の名前を呼ぼうとした瞬間開いた唇の間に舌を滑り込ませた。

男って、何でこういうこと本能で知ってるんだろ・・・。


反射的に引っ込んだハルの舌を追いかけて掴まえて、頭ごと逃げようとするハルを抱きしめるように閉じ込めた。
力一杯に目を瞑って顔を耳まで真っ赤にさせてるハルが俺のスーツをぎゅっと握った。

・・・やばい、可愛い。



「ハル」

少しだけ唇を離して呼ぶと、ハルは大きく息を吸った。
銀色の糸が引いて、消えて、息が届くくらい近くで顔を覗き込んだ。

「ツ、ナさ・・・」

ケホ、と小さく咳き込んでハルは戸惑うような声を上げたけど。
でも、止まらなかった。

「ツナさ、っ!」

今度は角度を変えて、もう一回重ねて、歯列の裏側をなぞるとまたハルがびくりと体を震わせて。

多分ハルの頭の中は真っ白なんだろう。俺も、真っ白だ。


ハルの手は縋るように俺のスーツを握り締めていて、皺になりそうだったけど気にしなかった。
反射的に何度も逃げようとするハルを追いかけて、掴まえて、閉じ込めて。
なけなしの理性で、ハルが酸欠になる前に離れて。

そうしてまた口を重ねた。


また離れると、ハルは赤い顔のまま酸素を取り込むように何度も息を吸って吐いて。
その間も瞼とか額とか頬にキスを落とした。

こんなこと、昔の俺じゃ考えもしなかっただろうな・・・。


「ツ、ツナ、さん・・・」


・・・や、ばい・・・。

苦しかったのか突然のことに戸惑ってるせいかさっきの余韻のせいか、目の端には涙が浮かんでいて頬は赤いままで。
見あげてくるハルに、ぐらりときた。

ああくそ!それ絶対に卑怯だっ!!

XYでちょっと欠けてる男ってのは、一生女には勝てないシステムになってるのかもしれない。



「ハル」

戸惑いでジリジリと離れようとしていたハルを引き寄せて、もう一回口を重ねた。

ぎゅっと口と目を瞑るハルにまた同じように上唇と下唇の間を舌でなぞって。
けど必死で耐えようとするハルに、今度は耳に口を寄せて。



「ハル・・・愛してる」
小さな声で呟いた。


ちんけなセリフだったけど、ハルをポカンとさせるには十分で。
思わずと言わんばかりに開いた目と目を合わせて、薄く開いた唇に唇を重ねた。


何度も何度も重ねても、足りない気がした。


また舌を滑り込ませると、今度は逃げないでそこにいて、あっさりと抵抗されることも無かった。
スーツを握っていたハルの手が恐々と背中に回って。


ああ、幸せで泣くって、こういうことを言うんだ。





君が好きすぎて



( この体中から溢れて止まらなくてどうしようも無い想いは、一体どうしたらいい? )