「ったく、あいつらは本当世話を焼かせる」 はぁ、と堪えきれない溜息をついて、リボーンは右手を腰にあてた。 その隣にいた武はその言葉に苦笑して、同じように彼らを見る。 「ま、でも良かったな。な、獄寺」 「うるせぇよ、野球馬鹿」 ニカっと笑ってみた先にいるのはちょっと目の端に涙を浮かべている隼人で。 むっとして言い返す隼人に武は今度は微笑みを浮かべた。 「ツナも、ハルも。幸せになってよかったな」 「・・・うるせぇよ、野球馬鹿。十代目が幸せになるのは当たり前だろうが」 ぐずっと鼻を啜って顔を背けた隼人に、さらに武は笑みを浮かべた。 ツナツナと言っているけれど、実はハルのことも大切に思っているのは知っていた。 一生態度に出すことはないだろうし、二人とも認識しあうことは無いだろうけど。 恋慕とか、そんな意味ではなくて。 「・・・本当に、良かったのな。二人とも」 「ああ・・・」 ぶすっとして答える隼人に、思わず武は声を出して笑ってしまう。 そんな当たり前の風景ですら優しくて。 武と隼人のやりとりを見ていたリボーンは、もう一度あの二人に視線を向けた。 昔のような気弱さはなくなり、それでも優しいままで。 まさに歴代に大空と称された彼らと並ぶに相応しい大空になった綱吉の影響力は計り知れない。 そうしてもう一人。 何の力も無い、偉大さもない、聖母でもない、たった一人の少女。 僅かに力をこめれば折れてしまうだろう腕を広げて――誰であろうと立ち向かってきた。 真正面で向き合って、立ち向かって・・・受け止めて、そんなハルの影響力は計り知れない。 「・・・まったく、本当に世話の焼かせる奴等だぞ」 ククっと喉で笑って、見張っているハルと、見張られながら仕事をしている綱吉を見た。 全く・・・マフィアの光景とは程遠い。 命取りになるような生ぬるささえ存在していて、殺したくない死なせたくないなんて甘えが見え隠れして。 マフィアでずっと生きてきたリボーンから見れば、マフィアという世界を軽視しているようにしか見えないけれど。 見ている視線に気付いたのかこちらを振り向いて、ぱっと弾けて、 「リボーンちゃん!」 その呼び名は何時になっても中学生のあの日から変わらなくて。 ハルの声に顔を上げた綱吉が柔らかく微笑んだ。 「(・・・仕事しやがれ、ダメツナ・・・)」 いつもなら愛銃で火を噴かせて注意をするところだけれど、口端を上げるだけに留めた。 幸せ、なんてこの世界には似合わないのに。 「ツナがさぼってるぞ、ハル」 その声が、自分でも驚くほどに柔らかかったなんて、一生言ってやるつもりはない。 この場所から一歩出て闇へと歩いていけば、こんな声なんて出る事は無い。 幸せなんて言葉、一生似合わないと思っていた・・・けど。 例えば、快活な彼女の声が毎日響いて、優しい紅茶の匂いがして。 例えば、教え子の声が毎日響いて、潜めあうような笑い声が聞こえて。 そんなときに。 |