目の前に広がるのは、断崖絶壁。 「は、はひ・・・」 ひゅおーと音が鳴り響いて風が吹いて、まくりあげられそうになったスカートをハルは慌てて抑えた。 ちらりと下をのぞいてみれば、何やら小さな茶色い点が一つ、激しく動いている。 多分きっとあれがツナさんで、少し離れた場所で止まっている黒い点がリボーンちゃんだとは思いますけど・・・。 あまりの高さにクラリと目まいが起きそうになって、ハルはぎゅっと地面を掴む。 「・・・ツナさん、こんなところを降りていったんでしょうか・・・」 おうちに帰るまでが遠足、じゃないですけど、家に帰るまでが修行のようなものなのでしょうか。 ハルは腕の中にあるお弁当を、ぎゅっと抱きしめる。 「女は度胸・・・ですっ!」 きっととても鈍い人だから、これくらい全力でいかないと気づいてはくれない。 だったらハルにできることは全力で突っ走るだけ。 一応持ってきたロープを太く丈夫な木に縛り付けてぎゅ、ぎゅと体重をかけて引っ張る。 これがハルにとって唯一の命綱だ。 「・・・うぅ、切れませんように・・・」 落ちたら怪我どころではすまないだろう。 ハルは手にお弁当を持って、それからロープをしっかりと握ってゆっくりと降りていく。 「っ!」 想像以上に高くて、不安定で思わずハルは息を呑んだ。 怖い。 でも、届けたい。 「大丈夫・・・大丈夫・・・絶対に、大丈夫・・・」 きっと何かあったらツナさんが絶対に助けに来てくれる。 でも、修業中だから迷惑を掛けないように、絶対に落ちちゃダメ。 だけど、何かあったらツナさんが助けに来てくれる。 頭の中でツナさんツナさんと繰り返していると、だんだん怖くなくなってくる。 「・・・あ」 漸くはっきり見えた綱吉は、毛布を肩にかけていた。 休憩中・・・か何かでしょうか。 「あ、」 ズル。 「は、はひぃいいいいいいい!!!た、助けてください、ツナさぁんっ!!」 そう思った瞬間に、ハルの足が岩からずれてぶらぶらと体が風に吹かれるままにされる。 はひぃ!!まだまだ地面までは遠いですぅっ!! 「ちょ、ハル!?」 ツナさん!とハルが目を開けると、綱吉の視線が体の中心より下にあって真赤なのが見えた。 はれ?何か・・・何、か・・・はぅぁ!!そ、そういえば今日中にハーフパンツはいてなかったんでしたぁ!! 思わずハルはバチンと足を閉じて、スカートを弁当を持っていない手で抑えた。 「っ、馬鹿っ!!」 突然真剣になった綱吉の顔を見える。 「は、はひぃいいい!!」 ななめになって、それから落ちていくのを感じながら、ハルは心中で叫んだ。 もっと、もっと・・・ |