嬉しかった。

心の中に占めるのはそれで一杯で、凄く凄く嬉しくて仕方が無かったんです。
だって、ハルとツナさんは結婚してて、子ども欲しいねなんて家族計画も話して、そうしてある日こっそり調べたら見事陽性。

ツナさんとの赤ちゃんが、ここにいるんですよ、ツナさん。
そう思うと、嬉しくて嬉しくて、もっともっと幸せになったんです!


いつ伝えようかな、どんな反応をするかな、そう思ってた瞬間でした。


「ハル!大変よ!」

突然飛び込んできたのはビアンキさんで、いつも大人なビアンキさんとは打って変って凄く取り乱していました。
何だか、凄く嫌なことが起きたんじゃないかって。
いっつも的外れな勘が今日はやけに鮮明で。

「ビアンキさん、どうしたんですか?」
外れて欲しいって思ったのに、ビアンキさんは苦しそうに言った。


「抗争が起きたわ。今までにない、大規模な・・・。ツナはもう出てるわ。私もこれから行ってくる。ハルの護衛には守護者やリボーンが交代で来るから、絶対にここから出ないで」

確認するように何度もビアンキさんが言った。

それで分かった。今回の抗争は今までとは全然違うほど大きなものなんだってことが。
今までの抗争だったら全員が行くなんてことはなかったし、だからハルを護衛するのもずっと同じ人だったし。

ビアンキさんだっていつも冷静で落ち着いていたから、だから今回の抗争は今までと全然違うものなんだってことが分かった。


「・・・はい」

ツナさんは・・・ツナさんは大丈夫なんでしょうか。
強い人だってことを知ってるけど、心配せずにはいられなかった。

信頼してるんです、でも100%なんてこの世にはないから怖いんです、ツナさん。
手を祈るように組むと、ビアンキさんがそっとその手を握ってくれた。

「ハル、ツナは大丈夫よ。だから信じていて」
祈っていて、といわれて出て行くビアンキさんに、どうしようもないくらいに悔しかった。

何でハルは何も出来ないんでしょう。
どうしてツナさんたちが頑張ってるときに、ハルは待っていることしかできないんでしょう。

ツナさん達は待っていてくれるから必死で帰ろうって頑張れるんだって言ってくれました。ハルの強い想いは届いてるからって皆言ってくれました。
でも、ハルには今この時怪我してるかもしれないツナさんを傍で護りたいんです。


だけどハルにその力が無くって、悔しくて悔しくて仕方が無いんです。



「ツナさん・・・」
怪我してませんか?仲間を失ってませんか?皆皆、大丈夫ですか?
何にも出来ないハルは、ここでこうして祈ってるしか出来ないんです。だから、この祈りは届いてますか?

悔しくて、悔しくて。
強い想いがあればいいって思ってたんです。いつだってどんな時だってツナさんを愛しつづける覚悟があれば、大丈夫だと思ってしまったんです。

それが今、ものすごい勘違いだったって、身にしみて分かるんです。
ツナさんも、獄寺さんや山本さんやリボーンちゃん、雲雀さん、骸さん、皆皆それでいいんだって言うんです。

優しい皆さんがそう言ってくれるから、ハルもそれでいいって錯覚しちゃってたんですね。
帰れる場所になろうって思うようになってしまったんです。


「っ、ツナさん――!」
強い力を持っていればよかった。
そうしたら、今すぐにでもここを飛び出して、ツナさんのところに行って、隣で闘ったのに。





無力なのは誰でもない私



( こうやって待っていることが嬉しいんだって言ってくれたけど、でもそれじゃ駄目なんです )