そしてそのまま抗争は続いて、今日の護衛はリボーンちゃんだった。


「・・・うそ、ですよね?」

嘘だって言ってください、リボーンちゃん。そんな、まさかそんなこと、無いですよね?
否定して欲しかったのにリボーンちゃんは下唇を噛み締めて首を振った。


「ツナの安否が不明だ。どこに居るか、わからねぇ」


嘘っ!!
嫌です、嫌、です、ツナさん。

ハルを幸せにしてくれるって誓ってくれたんですから。
だから帰ってきてくれなくちゃ、いやです・・・!



「――ハル」

突然リボーンちゃんに名前を呼ばれた。
「・・・これ、は・・・」
同時にずしりとした感触が手を襲った。
聞かなくたってわかる、銃・・・だけど、そうじゃなくて。

「奴等が本部の方に向かって来てる。もし、敵がハルのところまできたら・・・」
この銃で、リボーンちゃんが口を噤んだ。


それ以上はいわれなくてもわかった。
銃で身を守れ、なんて――違いますよね。ハルにそんな腕無いことしってますもんね。
もしも敵がハルのところまできたら・・・この銃で自殺しろってことですよね。

力の無い女が掴まる先の展開なら知ってるんです。特にボンゴレ夫人なら見せしめだってされるかもしれないってこと。
知ってるんですよ、これでもボンゴレ夫人ですから。




「――――!」
突然、屋敷に轟音が鳴り響いた。
敵が、ここまでやってきたんだ。

「いいか、ハル。ここを動くな」
「・・・はい」
リボーンちゃんはそう言うと音の方に向かって走り出した。

走っていくリボーンちゃんの背中はハルよりも小さいのに、いつだって傷だらけで。
本当はもっと愛されてたくさん遊んで、そんな年齢のはずなのに、ハルよりもずっとずっと大人で、何もかも分かってて。

そっと触れたおなかはまだ脹らんですらない。
ボンゴレの妊娠検査薬はかなり高性能だから、あれが外れることはまずない、ですけど。


それでも分かるんです・・・ここにいるよって声が聞こえるんです。
だからハルはお母さんになるのに、何にも出来ないお母さんになっちゃう。


「・・ツナさん」
どこにいるんですか、ツナさん。ツナさんも望んでくれた子どもが出来たんですよ、ツナさん。
死んだなんてことありませんよね?そんなこと、あるわけないですよね?

ハルを置いていったりなんて、しないって誓ってくれたじゃないですか。
何があるかわからないけど、だからこそ待ってるハルのためにも必ず帰ってきてくれるって、言ったでしょ?ツナさん。


「信じてます・・・」
だから、早く帰ってきて。

掌の上で握り締めた銃がずしりと重く感じた。





そのてのひらのうえには



( 小さな彼の悲しみと苦しみと悔しさと辛さと切なさが詰まった銃 )