「と、いう素敵なハルとツナさんの愛情の中でヨシくんは生まれたんですよー」 「ふーん・・・」 キラキラした目で話を語るハルに、吉宗は溜息を漏らした。 何度目だ・・・これ。 「ふーんって、もう!ヨシ君が生まれる前にハルを助けてくれた家族3人の愛あるストーリーをそんな適当に聞かないでください!」 「って言っても、もう何回も聞いたよ・・・第一俺そんな記憶ないし」 「はひ!何どきいてもいい話はいい話なんですよ!ヨシ君!」 「そんなこと言っても・・・あ、父さん!」 頬を膨らませて言うハルに吉宗は父親の姿を発見して助かったと言わんばかりに立ち上がった。 その視線の先に隼人とあるく綱吉を見つけて、ハルの目が輝いた。 「ツナさん!」 乙女だ・・・と、若干10歳の吉宗は思う。 もう年は・・・確か30になるというのに二人とも見た目凄く若いし、母さんはいつまで経っても恋する女の子だし。 「ハル、吉宗。二人でお茶してたの?」 「はい!だからツナさんとのあのお話を聞かせてあげてたのに、嫌がるんですよ、ヨシ君ったら!」 もうっと頬をまた膨らませたハルに、綱吉が苦笑する。 「・・・お疲れ様」 「本当だよ・・・父さん代わってよ」 「いやー・・・お父さんちょっと無理だなー」 あはは、と男二人が同時に乾いた笑いを浮かべた。 ハルの暴走は止められるはずもない。 「――で、ってツナさん、ヨシ君!聞いてるんですか!?」 「も、もちろん!」 言い寄られた綱吉が即答すると、ハルはニッコリと笑った。 「どうせまたこの話始めたよーって思ってるんでしょ」 ずいっと、迫るその顔は笑顔だから尚更怖い。 「い、いや、そんなまさか」 あはははっと笑う綱吉に、でもね、とハルが言葉を止めた。 「でも、何度も言ってると思うんです。本当に、あの時ヨシ君がハルを選んでおなかの中に来てくれてよかったって。ツナさんを助けるのを手伝ってくれてよかったって。ツナさんを助けれてよかったって。生まれてきてくれたのがヨシ君で本当によかったって」 「・・・ハル」 「お母さん・・・」 ハルの瞳からはポロポロと涙が溢れていて、綱吉はそっとハルを抱きしめて、吉宗はそっとハルの手を握った。 「うぅ〜、ハ、ハルは幸せものですぅう・・・!!」 途端、号泣し始めたハルに苦笑しながら、綱吉はもっと強く、吉宗は両手を握った。 「俺も幸せだよ、ハル」 「お母さん、俺もだから」 泣き止まないハルを慰める二人を見ながら、いつのまにか増えていたギャラリーは静かに笑った。 |