その想いの行き着く先へ



Epilogue ...XX

沢田家の人間全てが眠りについた頃を見計らって、リボーンは静かに寝床から身を起こした。

綱吉とハルの間で起こった、いや起こっていた恋愛沙汰は一応の決着をみせたようだ。
どうやら丸くおさまったらしい、というのは綱吉のあのしまらない顔を見れば一目瞭然のこと。
(……まったく、世話のやける……)
耳に届く僅かな寝息に大きく溜息を吐きつつ、ボンゴレにとっても激動の一日となった今日を振り返る。

綱吉達の知らないところで、実は大きくも小さいマフィアお騒がせ事件があったのだ。





(ハルを焚きつけるためにビアンキが流した情報。あれがまさかガセだったとは、な―――)
先代―――九代目が倒れた。そんな知らせが入ってきたのは、偶然にもあのパーティー終了直前だった。
リボーン自身驚いたものの、あの老体ではいつ何が起こるか分からないので前々から覚悟だけはしていた。

とうとう時がきたかと諦めにも似た気持ちで、いた。綱吉を連れて行かねばならない、その時が。

その情報はマフィア界に瞬く間に広がり、ビアンキも数時間の遅れはあったがそれを知った。
変化を恐れて動こうとしないハルに伝えると言い出したときは迷ったが……まあ、いずれ知れることでもある。
知った上で尚現状維持を望むならそれも結構。この先マフィアとしてイタリアで暮らすことは無理だと判断した。

もちろん、綱吉の望みを叶えてやろうとリボーンが直接動けば―――もっと簡単に事は進んだかもしれない。
だがそれでは駄目なのだ。こと恋愛では、本人たちの意思が何よりも重要だと思っている。


結局いいところに収まったのだからそれでいいだろう。……それよりも、そのガセ情報の方が問題だった。






九代目が倒れた、というのは本当らしい。彼は今も厳重に警備された部屋から動けない状態だ。
そしてその事実が丁度良かった。現在ボンゴレは内部洗浄の真っ最中で、裏切り者を見つける為に噂を広げた。
動けぬならその隙に、と動き出す連中を炙り出し粛清するつもりだったそうだ。よくある手ではあるが。

どの筋に流したのか情報はあっという間に広がり、ディーノを始めとするマフィア関係者は全て知ることとなる。


―――ただし、その真実は違う。
こちらの混乱を防ぐためか、わざわざ緊急回線で連絡を取ってきた家光によると―――

九代目が倒れた理由は病気などではなく、単純に階段を下りる途中でぎっくり腰になっただけ。
命には全く別状ないというからお笑い草だ。これには流石のリボーンも珍しく脱力して言葉を失った。


ただ階段で転んでぎっくり腰になっただけで、噂が勝手に広がり、次から次へと怪しい連中が出てきたというシナリオ。
そうなるよう九代目側が仕向けたわけだが――――いささか人騒がせすぎると思うのは悪いことだろうか。

結果論として、そのガセネタのおかげで綱吉とハルがうまくいったと言えなくもないけれども。



「まあ、終わりよければ全てよし、か?」



少し変わったとはいえ、まだまだ少年の寝顔を見ながら、リボーンはそっと笑みを浮かべた。


---END---