「おはようございます!京子ちゃん!」
「おはよう、ハルちゃん!」

道の向こう、髪型は中学の時のまま変わらないものの随分と大人びてきた親友を発見して、ハルは綱吉の腕を離して駆けだした。
それが、残念だとか、・・・いや、そんなことは想わない、ぞ。うん。
同じく隣に立っていた先輩であり守護者であり仲間でもある了平に、おはようございます、と頭を下げる。
「うむ!極限おはようだ!」
にっと笑う晴の守護者は寒さなんてもの弾き飛ばしてしまいそうなほどで。
それに少しだけ苦笑する。

「十代目!おはようございます!」
「ツナ、おはようなのなー」

そうこうしてると、隼人と武がやってきた。
ちなみに、昔は隼人が家まで迎えにきていたのだけれど・・・。
(あれは、流石に俺でもキレたもんなぁ・・・)
まぁ、色々とあって家まで迎えにくるのを禁止しました、うん。
だけど流石にしょぼんとして泣きだした隼人に罪悪感もわいて、この辺からの合流なら許してしまったあたり、自分って甘いと思う。
っていうか、リボーンにも甘いって言われたんだけど・・・。
(まぁ、あれは隼人が全部悪いってわけじゃないし)

「うん、おはよう。隼人、武」
にっこりと笑って返せば、隼人は忠犬らし・・・ごほん、隼人は輝かんばかりの笑みを浮かべた。
「ハルも笹川も、おはようなのな!」
「はひ!おはようございます!」
「うん、おはよう!」
きゃいきゃいと話をしていた二人がにっこりと笑う様は、本当に可愛らしい。
毎日スパルタ以上とも言えるあの修行を思い返すと、本当に癒しだ・・・うん。
「先輩もおはようございます、なのな!」
「うむ!山本もタコヘッドも、極限おはようだ!」
「誰がタコヘッドだっつーの!」
ぎゃいぎゃいと言いあいながらも、武と隼人が合流した時点で足を進めていた。

京子とハルは昨日のテレビの話だとか、流行の服だとかの話をしていて、お互いにつつき合ったりじゃれあいながら笑いあう姿は酷く可愛らしい。
・・・だから、ついついそれを周りから見えないような位置に立ってしまうのは、うん・・・仕方がないことだと思う。

「そういえば、ツナさん!」
ふいに、話はいったん区切りを迎えたのか、突然こちらを向くハルに、綱吉がきょとんと首を傾げた。
「ん?なに?」
「この間親戚の子のいらない服をいただいたので、ランボちゃんに持っていきますね!」
ランボは小学校に通うようになり、その見た目もあの頃とは違って随分と人間らしく・・・っていうのもどうかとは思うけど、兎に角普通の男の子のようになってきた。
時折、未来のランボの片鱗が見えるような気がしないでもない。
「ああ、うん。ありがとう、ハル」
「いいえ!ハルもランボちゃんやイーピンちゃんに服を着せてあげるのが大好きなので!今日そっちに行く前にもっていきますね!」
「ああ・・・あ、量あるんだったら俺も行こうか?」
「はひ?でも・・・」
「昨日も持ってきてくれたイーピンの服、結構あっただろ?こっちは助かってばっかりだし、荷物持ちぐらいは、ね?」
「はい!ありがとうございます!」
にっこりと笑ったかと思うとその勢いのままに腕に飛びつくハルを、こら!と引き離す。
厚着のくせに柔らかくあたる感触だとか、髪がふわりと揺れて甘い匂いが弾けることだとか・・・まぁ、勿論男として正直に言えば心地よくないわけがないんだけど。
っていうか、まず皆がいるし。


「・・・って、なんで二人ともそんな顔してるの・・・?」
腕から引きはがしたハルは特に気にした様子もないまま京子との話を再会させていて(話の途中で思い出したらしい)、それを見送って振り返ると、そこには対象的ともいえる顔をした二人がいた。
愕然とした表情の隼人と、にっこりと笑う武の姿。
「じゅ、十代目っ・・・!」
「な、なに?」
今にも涙を流しそうな顔をして縋ってきた隼人の頭を撫でてやると、武がにっこりとした笑顔のまま口を開く。
「いやー・・・なんか、ラブラブなかれかのみたいなのなー」
「ぶっ!」
「ぎゃっ!!」
あ・・・やべ。
噴き出した勢いで、隼人の頭を思いっきりがっしりと掴んでしまったらしい。
俺拳闘の戦闘スタイルだから、いやおうがなしに握力とかその辺は凄いことになってて。
うん、ごめん・・・という気持ちを込めてもう少し頭を撫でておく。
「・・・っていうか、ラブラ・・・な、って・・・」
「いや、もう家に来るのが当たり前なのなーと思っただけなのな!」
「う、うぅ・・・お、俺だって毎日十代目の家に・・・!」
「隼人は修行があるでしょ。・・・ハルは、その、ランボ達に逢いに来たりだとか、ビアンキと話してたりだとか、差し入れに来たりするだけで・・・」
毎日のようにやってくるけど、別に全部が全部俺が目的ってわけじゃない。
もう毎日のことになっている修行の差し入れは毎日してくれるけど。
「だから、ツナにとってハルと一緒にいるのは、当たり前なのな?」
「・・・」

にっこりと、告げた武の言葉に、咄嗟に答えることが出来なかった。





君がいる日常



( 男にとって愛は生活の一部だが、女にとって愛はその全部である *バイロン )