「はひ!可愛いですよ、ランボちゃん」 朝の話通りに帰りにハルの家によって、着替えたハルと一緒にランボへの服を持って家に帰って。 そうして、着せ替え人形と化したランボと嬉々として着せかえるハルの姿を椅子に座ってぼんやりと見る。 「気持ち悪ぃ顔してんじゃねぇぞ」 「ぐっ!」 げしっと横から赤ん坊から幼児、と呼べるようになった家庭教師様の蹴りが飛んできて、思わず悲鳴をあげかける。 「きい、気持ち悪い顔って・・・」 「しまりがねぇ。それでボンゴレ10代目が務まるとでも思ってんのか」 がちゃりと銃を向けそう言うリボーンの言葉に思わず口を噤む。 そんなしまりのない、と言われる顔なんてしてた覚えはないのだけれど。 「そういえば、おめぇはハルに言ったのか?」 「へ?」 「今年の終わりにイタリアに行くことだ」 「・・・いや、えっと、まだ・・・」 じろりと睨まれて、そっと顔を逸らす。 本当ならばもっと早くに言わなければいけなかったのだけれど、ついついその笑顔を前に何も言うことが出来なくて、いまだに機会を逃していた。 本当は、言わないといけないってわかってるんだけど・・・。 けど、そうするとあの笑顔が曇ってしまうんじゃないかと思うと、中々言いだせない。 「・・・本当なら卒業まではいさせてやりてぇんだがな・・・」 「九代目、調子があまり良くないんでしょ?分かってるよ・・・それは」 本当なら卒業まで待たれるはずだった綱吉の十代目就任は、九代目の調子があまり良くないことが関係して随分と速まってしまった。 多分本当ならすぐにでもイタリアに行くところだったのを、リボーンがぎりぎりまで引き延ばしてくれていることは知っていた。 「夏にはイタリアに引き継ぎの準備にも行く。・・・早目に、伝えておいてやるのが筋ってもんだぞ」 「・・・うん」 流石にもうマフィアになりたくない、なんて言っていられない。 皆がもう俺についてくるという決意を固めているのは知っていたし、今になってやめる、なんて言い出せる状況じゃないってことも分かってる。 ハルや京子ちゃんには日本に残ってもらいたいということも、つたえなくちゃいけないこともわかってる。 勿論、二人がボンゴレ十代目と関わってることはバレてるから、護衛は置いとくけど。 京子ちゃんは、了平さんがついてくることもあって、もう知ってるけど。 ハルには俺が伝えるからと言わないでほしいと、京子ちゃんに伝えておいてもらっている。 伝えなくちゃ。 伝えなくちゃ、と思うのに。 ハルの笑顔がかすんでしまったら、悲しい顔をさせてしまったら。 そう、想うと口が開かない。 ついつい関係のない話ばかりが口をついて出て、そのたびに後悔する。 「わかってる・・・ちゃんと、言う、から」 「・・・ハルのためにも、早く言ってやれ。・・・突然じゃ、可哀想だからな」 「・・・ん」 ぎゅっと目を瞑って開いて、そうして少しだけ逃げるようにリボーンからハルへと視線を移す。 楽しそうにランボの着せ替えをするハルの笑顔をじっと見つめる。 昔から、何度も元気づけられてきたその笑顔を、いつから失いたくないと思うようになったのだろう。 いつから、彼女は女の子なのだと、そう思い知らされるようになったんだろう。 言わなくちゃ、言わなくちゃいけないのは分かってる・・・けど。 「・・・ダメツナ」 小さく呟かれたその言葉が、やけに耳の中に響いた。 |