溢れだしたら、それはもう押さえつけることなんてできない。


「はひ、すみません。・・・今日も送ってもらっちゃって」

毎日恒例になっているハルの家まで送る時の毎回の言葉に、思わず苦笑する。

「いいよ。毎日差し入れにランボ達も見てもらっちゃってるし、夕飯の手伝いまでしてもらって・・・。むしろこれぐらいじゃ返せないくらいで逆に申し訳ないのにさ」
「そんな!ハルが好きでしてることなんですから!」
「じゃあこれも俺が好きでしてるってことで、ね?」
そう首を傾げて言えば、はひ、とハルが力なく呟いて俯いた。

可愛い。
ハルへの気持ちを自覚してから、そればっかりが頭の中に浮かんでくる。
・・・いや、本当はハルへの気持ちを自覚する前から、なんだけど。


「見てください!ツナさん!空に星が一杯です!」
はひー!と叫びながら空を指差すハルにつられて空を見上げると、そこには満点の星空、があった。
漸く暦の上でも春になったとはいえ、まだ夜は寒くて、空が綺麗に澄みわたって見える。
「本当だ・・・最近夜空とか、見てなかったなぁ」
「お月さまも大きいですねー」
ぎゅっと腕に抱きつくハルの触れる場所から感じる体温と、まだ冷たい空気を感じながら、ゆっくりと歩く。


一日、一日が過ぎていく度に、ハルへの気持ちと、ハルへの罪悪感が膨らんでくる。
早く、言わなくちゃいけないのに。
でも、口を開くたび言葉になるのは関係のないことばっかりで。

(でも、俺が、言いたいんだ・・・)


「ふふふ!誰もいないと、なんだか貸切みたいですね!」

そう頬を染めて(多分寒さだけじゃなくて)見上げてくるハルが。
嬉しそうに鼻歌を歌いながら、今にもスキップしそうなほどなハルが。

好きなんだ。
好きだ、好きで。
(どうしようもない)


言わなくちゃ。
俺は、イタリアに行くんだって。
ハルを連れていくことはできないから、ハルは日本にいてほしいって。

言わなくちゃ、いけないのに。


悲しませたくない。
泣かせたくなんて、ない。
そんなハルを見るなんて・・・嫌だ。


「ツナさん!」
「ん?」

少し腕を離して、向かい合うハルが見上げてくる。
(可愛い)

好きだ。
凄く凄く、好きだ。


「ハルは、ツナさんが大好きです!」

凄く凄く、

「俺も、好き・・・だ」



好きだ。





君に、恋しました



( せつなる恋の心は尊きこと神のごとし *樋口一葉 )