沢田綱吉17歳。

4歳児の目の前で土下座しています。




「悪ぃな、どうやら俺は耳が遠くなったらしい。んで?もう一回言ってもらおうか?」
ダンっと足で床を踏むリボーンに思わずびくりと肩が跳ね上がる。
「あ、あの・・・は・・・ハルと、付き合うことに、なりました・・・」
「あぁん!?」
どすの聞いた声にびくりと身体がすくむ。

「お前、今年の終わりにはどうするのか覚えてんのか?」
「い、イタリアに行きます・・・」
「旅行じゃないことは覚えてんだろ?」
「ぼ、ボンゴレのボスになりに、行きます・・・」
にっこりと、珍しいほどの笑顔を浮かべるリボーンに、思わず悟った。
あ、死ぬこれ。

「ってめぇはぁああああ!!自分の状態を理解してやがるくせに、その上でハルと付き合うだぁああああ!?」
あぁあん!?とチンピラも真っ青のドスの聞いた声を上げるリボーンに、ビクビクと身体が震える。
だけど無論、立ちあがって逃げ出すことは許されない。
「しかもどうせイタリアに行くことも言ってねぇんだろうがっ!」
「・・・え、えっと・・・それは・・・」
「一辺死んでくるか?あ?」
「それはお断りしたいなぁ、なんて・・・はは」
ぎろり、と普段は見た目だけなら可愛らしいまなこが、鋭く光る。
うわ、やばい・・・超逃げたい。

「お前分かってんのか!?ハルは日本に置いていくんだぞ?イタリアに連れてくなんてことはできねぇんだぞ!?」
「・・・わ、かってる・・・わかってる、けど」
「分かってねぇから付き合うことになったんだろうが!」
あぁん!?と銃の先でぐりぐりとほっぺを抉られるけど、抵抗はできない。
う、痛い・・・。

「ったく・・・だからさっさと言っちまえばよかったんだ・・・」
「う・・・」
「ぐだぐだ言わなきゃ言わなきゃ言ってるわりにはいわねぇし、ぐじぐじしやがって」
「うぐ・・・」
「その結果がハルと付き合うだ?」
ふいに、沈黙が漂う。
じっと見つめてくるリボーンの視線が痛くて、思わず笑みを浮かべた。
「え、えへ?」

「一回棺桶に片足突っ込ませてやろうか、このダメツナぁあああああああ!!!!」
「どわぁあああああ!!!」

わぁ、銃弾って雨みたいに降り注ぐんですね!
初体験☆


「・・・分かった。てめぇがいわねぇってんなら、俺にも考えがある」
「へ?」
がちゃり、と銃を一度ならせて懐にしまったリボーンが、ふぅと深い溜息をこれ見よがしにつく。

「お前が言わないんなら、俺が―――」
「駄目だっ!!」

思わず遮った俺に、リボーンが少しだけ驚いたように見上げてくる。
けど、駄目だ。
それだけは・・・!

「俺が、絶対に俺が言う!ちゃんと、イタリアに行く前には、別れる・・・!ハルをできるだけ傷つけないように・・・!ちゃんと、俺が言うからっ!!」

絶対に、絶対に駄目だ。
それだけは、それだけは。

「だから・・・今だけ、」
「・・・」
「今だけ、許してよ・・・リボーン」
思わずじわりと浮かびそうになった涙を必死に堪える。
今だけ、今だけだから。



「・・・絶対に、言うか?」

長い沈黙の後にぽつりとつぶやいたリボーンの言葉に、俺はゆっくりと頷いた。
それを見て、またリボーンが深く溜息を吐く。
「期限は今年の終わり、イタリアに行くまでにだ。それまでに言って、それから別れてこい」
「・・・う、ん・・・」
ゆっくりと頷くと、またリボーンが溜息をつく。
「守護者達には俺から言っておく。・・・あと、最後の情けで京子には俺がごまかしておいてやる」
「う、ん・・・ありがと、リボーン」
へにゃっと笑った俺に、リボーンはもう何度めかになるか分からない溜息を、ひときわ長くついた。





傷つけていいのは



( 恋は二人のエゴイズムだ *アントワール・サール )